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本当に久しぶりの電話だった。嬉しいなあ。掛けて来たのは高田和明さん。陸前高田出身、埼玉県草加市在住の歌手(72)でした。お互い元気で何より!そして近況報告「部屋の整理をしたら、昔のレコードが出て来たので贈ります」でした。二日後に届いたのはLPレコード10枚。“愛をあなたに”の副題が付いた「去りゆく季節」(1986)と、EP10枚「三陸旅情」(1983)。歌っているのはもちろん彼、高田和明(本名・菅野健一)。のちのちのためにと、最後の二箱(未使用品)をのこしておいたものだったらしい。ありがとう。
幾年も前に聞いていた話では、何ヶ所かでカラオケ教室を開いているとの事だったし、その合同発表会のパンフを届けてくれたこともあったが、このコロナ禍で教室は閉じたまま、ステージもなく、今は老人ホームで調理補助をやるアルバイトをして食いつないでいるとのこと。哀しいだろうなと思ったが仕事あるだけ良し!かな。 あの2011・3・11の東日本大震災が起こる4日前の3月7日付本紙、盛岡タイムス、この欄№10に書いた高田和明の「三陸旅情」。その歌も旅情も、三陸沿岸の美しかった街々の風景と共にあった何もかにもが消えてしまったのですから、一人、北海道から沖縄までキャンペーンと称す唄旅しながら10年かけて10万枚を手売りした男のロマンさえも一瞬にして消え去った日でもあり、彼にとっては致命的な心の痛手でとなったに違いない。 「手売りで10万枚!」この気が遠くなりそうな偉業に、ジャンルは異なれど音楽に生きる僕も感動の心押さえきれずに、1986年、全10曲書き下ろしの新曲集LP「去り行く季節」(ビクター)をプロデユースして発売にこぎつけ、東京杉並公会堂と郵便貯金ホールでその発表会。そのどちらの会場も超満員にした彼の底力に僕は再びの感動を覚えたものでした。コンサートタイトルは「愛をあなたに・高田和明オンステージ」。ストリングスやオーケストラをバックに思う存分に歌った彼にとっては、一世一代の晴れ舞台!レコード売り場も長蛇の列。陸前高田から、貸切バスで駆け付けた人たちはおらがまちの千昌夫さんに次ぐ二人目スターの凄さに驚いた様子でした。 昨今のコロナ禍、これまでの生活様式を一変せざるを余儀なくされてしまった今「去り行く季節」を聴けば「帰らない日々だけど想い出が甦る」の歌詞が心に響き渡ってくる。 戻る |
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