http://www.johnny-jazz.com/ 盛岡のJazzスポット Jazz&Live 開運橋のジョニー 照井顕(てるい けん)
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照井顕の「字我像」(1)
萬年筆での再稿
休筆などと言えば何となく聞こえが良いかも知れないが、文章らしきものを書かなくなって三年が過ぎた。


最小の一、二年はラクチンこの上なく、ペンを握らないことがこんなにも気楽なことかと、アンノンとした生活を満喫した。
だが三年目ともなると、頭の中、心の中、そこら辺から立ち上ってくるモヤモヤ感の充満によっての酸欠状態。
そこで一念発起。遂に、と言うべきか、酒の勢いを借りてと云うか、今またこうして文を書き出していている。今時ならほとんどの人はパソコンに向かって……というところだろうが、僕は今、使いおろしたばかりの真新しい萬年筆を握っている。
この萬年筆は一年程前、長兄から「これ顕が使えや」と貰ったものである。聞けば、いつぞやNHK・TVの取材を受けた時に頂いたものであったらしい。重力バランスの良くとれたイタリア製モンテグラフである。
それを見ていた兄の娘は「ケンちゃん!それ、父ちゃんが貰った時から私が欲しいナと思ってた萬年筆なのよ!」と言って笑った。
兄は娘をたしなめるように「顕ちゃんは物書きだから使ってもらった方がいいんだ」と言った。僕はその時、すでに二年もペンを握っていない後ろめたさが、ふと頭をよぎった。
少し若い時には筆勢(圧)があったから安くて軽いシェーファーの萬年筆を何本も使った。字は次第にミミズ這いの如くになり、ならばと少々立派な細字のセーラーに変えたら“早事”が効かない。
鉛筆も使ったが減りが速いのでしょっ中削らなければならず、とは云え、小刀で削るのはいい感触であったが、もどかしく、プラチナの太字に替えた。これは実によくすべり、気持ちよく書ける。
ところが、時折り自分が書いた字を見て、果たして他の人はこの字を判読できるだろうかと思われる様な書体(達筆?)となっていた。
そこで!というのも何だが、これまで使っていたB判の四百時詰から、今回A判四百時詰へと変えて見た。これは幾分マス目が小さいので太字では難しい。そこで、この中字らしきモンテグラフ萬年筆の登場と相成った。少しゆっくり書いているせいか、文字はだいぶ読みやすい形になっているようだ。
このペンを貰った時、これで原稿を書くようになったら、細字のペンは兄の娘にあげようと思ったが、今だに渡せないで来た。どうやらその時がようやく到来したようである。
要は、もう一度仕切りなおしの状態からペンを持ち直してみようと思う。このことを奮い立たせてくれたのは、かつてコミックモーニング(講談社)の新人大賞を受賞し、マンガ家としてデビュー、現在は地元・陸前高田に戻ってマンガを描き続け「徹夜徹夜で仕上げて原稿送ったァぞ!しこたま飲んで寝るぞー!」と晴れ晴れとした畠山耕太郎さんの姿を幾度となく見てきたからでもある。

2001年2月15日
東海新報に掲載


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