盛岡のCafeJazz 開運橋のジョニー 照井顕(てるい けん)

Cafe Jazz 開運橋のジョニー
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盛岡市開運橋通5-9-4F
(開運橋際・MKビル)
TEL/FAX:019-656-8220
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幸遊記NO.321 「増田れい子の母・住井すゑ」2017.3.6.盛岡タイムス
 電話の向うで「照井さん、夢のゆくえという本をお持ちですか?26人の熱い女たちのことが書かれていて、その中に穐吉敏子さんも載っているんですが?」だった。僕は知らない持っていない。後日、その電話の主が現われ「つれあいのお千鶴さんの本だけど再読して“好きな書き方をする人だよ”と言ってました。ハイプレゼント!」
 本は1982年鎌倉書房刊。登場の女性たちは、向田邦子、黒柳徹子、吉原すみれ、安川加寿子、兼高かおる(僕の息子の名も兼高)、森英恵、前橋汀子、赤尾三千子、橋田寿賀子、澤村貞子、高田敏子等々読みたい人だらけ。中でも「スープのそばの音楽」と題された秋吉敏子を真っ先に読んだ。その冒頭「この曲は別府の知り合いに何かつくってほしいと言われて書きました“タイム・ストリーム”です。ハスキーな声のあとに続いた数分の曲が忘れ難く、耳に残っている。この曲はとりわけ私にはあえやかにやさしく聞こえた。」とある。
 35年以上も前のこの話の主、つまりこの曲をつくって貰った人と僕は、来年(2018)米寿で米国から帰国公演する穐吉さんの出演について連絡を取り合っていた最中だったから、何とタイムリーなストリームなのだろうと思った。
 著者・増田れい子氏は、穐吉さんと同年の1929年に生まれ穐吉さんの誕生日12月12日(2012)に亡くなられた。毎日新聞初の女性論説委員や学芸部編集委員など歴任した方で、1984年女性初の日本記者クラブ賞を受賞。マスコミ九条の会、女性九条の会などに関わった。著書は「くらしのうた」「午後の思い」「独りの珈琲」「風の行方」「ゆりかごの歌」など30冊程。彼女はこの「夢のゆくえ」の26人目に母を登場させて書いている。
 母とは、あの不朽の名作「橋のない川」の著者・住井すゑ。差別され、“部落民”と呼ばれさげすまされ続けた悲惨な境遇から栄光の日を目指して立ち上がった人々の、心の純粋さ明朗さを迫力ある筆で描いた大ベストセラー(450万部)は連作映画(1969、70)にもなった。戦時中長男を軍隊にとられると連日部隊長に手紙を書き送り「人殺しにするな」と訴え続け、自分を軍法会議かけるならかけろ。逮捕するなら逮捕せよ!と言い続けた。それはまさに子の生命を生んだ“母”だからこそ言えた真実であろう「人間は生命を生む、権力は命を奪う」が母・すゑの根底にある認識とあった。



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